痔,いぼ痔,きれ痔,痔ろうの原因や症状と漢方薬治療法
について述べます。
痔の原因は?
人は二本足で立ちますから、腹部の血液は
重力によって骨盤周辺の静脈や肛門に溜まりやすくなります。
直腸や肛門の周辺は静脈がビッシリと取り巻いています。
この静脈血の流れが悪い状態が続くと、うっ血し充血して痔になります。
もしも動物が二本足で立つと、動物にも痔が多くなるでしょう。
「痔」は肛門にかかる負担が原因で起こりますから、
一般に痔核の引き金になるのは便秘や下痢などの排便異常です。
硬い便をいきんで出したり、トイレに長居すると、うっ血が起きやすくなります。
また長い間座ったままだったり、立ち続けることや、
冷え、アルコール、肉体的、精神的なストレスもうっ血の誘因です。
とくに女性は妊娠や出産によって肛門周辺の血管を圧迫するため、
痔になりやすく産後も回復まで時間がかかります。
痔の種類
痔は肛門周辺の病気の総称で、大きく3種類に分けられます。
イボ痔(痔核)直腸や肛門の血行が悪くなり、血管の一部がふくれあがる。
きれ痔(裂肛)固い便によって肛門付近が傷つく。
痔ろう(痔瘻)細菌感染によって化膿する。
このうち最も多いのがイボ痔(痔核)で、痔全体の約半数を占めます。
いぼ痔(内痔核と外痔核)の原因と症状
直腸と肛門を隔てる歯状線を境にして、
直腸側にできて外から見えないものが「内痔核」、
肛門側にできて外から見えるものが「外痔核」です。
内痔核が脱出を繰り返していると、
外痔の静脈叢も膨らんで球状に盛り上がります。これが外痔核です。
内痔核が肛門の外に脱出して大きくなる外痔核は、
内外痔核や脱肛とも呼ばれます。
直腸側にできた内痔核や痔ろうは痛みません。
しかし皮膚には、痛みを感じる神経がたくさんありますから
肛門側にできる外痔核は痛むのです。
また、いぼ痔は突然、大量の出血がありますが、
切れ痔は出血は少なく、拭(ふ)いた紙に付着する程度です。
いぼ痔(痔核)の進行度と症状
1度痔核の肛門外への脱出や痛みはなく、排便時に出血することが多い。
2度排便時の脱出や出血があり、排便後、肛門内にもどる。 痛むこともある。
3度排便時に脱出し、指で押し込まないと元にもどらない。
4度脱出しやすくなり、指で押し込んでも元にもどらない。
固くなって痛みも痔出血もなくなり、粘液がしみ出て下着が汚れる。
きれ痔(裂肛)の原因と症状
便秘して便が硬かったり大きかったりすると、
歯状線より外側の肛門の皮膚が切れる事があります。
肛門は敏感な部分ですから、皮膚粘膜が切れると
排便時やその後に出血を伴う強い痛みを感じるのが特徴です。
硬い便をすると、すぐに同じ所が切れてしまいます。
肛門が切れると排便の時痛むため、ついトイレを我慢してしまい、
その結果、便は固くなって切れ痔はますます悪化してしまいます。
最初は排便時に少量の出血と痛みがある程度です。
治療が遅れたり、再発を繰り返すと傷の部分が潰瘍化し
痔の中で最も痛い肛門潰瘍と呼ばれる状態になります。
排便以外にも長時間痛みが続き、手術が必要なケースもあります。
肛門そう痒症(かゆい痔?)
肛門のあたりが痒くなる病気ですが、かゆみの原因は色々あります。
肛門の周りは汚れやすいため、かぶれて痒くなることがあります。
脱肛や痔漏、きれ痔が原因となったり、神経症が原因のかゆみもあります。
痔と間違えやすい病気
痔出血に慣れてしまっていて、大きな病気が隠れてしまうことがあります。
クローン病、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎、白血病
または、大腸がんやポリープなどのことがありますから
病院のチェックはしてもらって下さい。
肛門周囲膿瘍・肛門周囲炎
痔ろう・肛門周囲膿瘍は、肛門部の化膿性疾患です。
「化膿」という点で、いぼ痔やきれ痔とは異なります。
肛門の歯状線付近には多くの肛門線が開いていて、糞便と接触しやすいため
細菌感染し化膿します。急性の化膿性炎症を肛門周囲膿瘍といいます。
肛門周囲膿瘍では肛門線に沿って外側に膿がたまり、
激しく痛み肛門の周囲が赤く腫れる肛門周囲炎の状態になります。
大量の膿が出ることもあります。
痔ろう(痔瘻)
これらの化膿が悪化してすすみ細長く深いトンネル上になったものが痔ろうです。
直腸の中か肛門周囲に口が開き膿が出てきます。
痔ろうになると、赤く腫れたり痛むことが少なくなりますから
痔ろうになったことに気づかないことが多いのです。
ただ膿がたまって口が開かないと炎症症状を示し、
排膿すると軽快することをくり返します。
肛門周囲がジクジクしたり、下着が汚れて気づく事もあります。
痛みが無いため放置しておくと、痔ろうの範囲はますます広がって
直腸の大部分を切り取り、人工肛門が必要になることもあります。
痔ろう・肛門周囲膿瘍には抗生物質があまり効果が無く、
薬では治らないとされていますが、決してそのようなことはなく、
手術をするしないにかかわらず服用してみるべき漢方薬はあります。
日常生活での治し方と予防
日常生活で大切なことは「正しい排便のしかた」と「排便後のケア」です。
いきむ時間とトイレにいる時間を短くするために、
トイレに行くのは便意を感じてから。目安は3分以内。
便の7~8割は軽くいきんだだけで誰でもすぐに出ます。
ところが残りの2から3の便を出そうとすると強くいきみますから
肛門にものすごい圧力がかかることになるのです。
残便感があっても、「一度に全部出そう」などと考えないで
「また便意を催してから行けばよい」と気楽に考えましょう。
排便後のケアは、お湯で洗い流せば便の付着は減り、痔の様々な症状も治まります。
洗浄器付きトイレ、シャワーやぬれティッシュ、洗浄綿紙などがおすすめです。
入浴は体が温まり、肛門周辺の血行がよくなります。
また、肛門も清潔に保たれることになります。
長い時間座っていたり、立ったままでいると肛門がうっ血するようになります。
長時間同じ姿勢でいないで、時々軽い体操をして身体をほぐしましょう。
足や腰を冷やすと肛門周辺の血行が悪くなり、うっ血します。
アルコールや 刺激物は控えめに 。
これらの日常生活でのケアを通して、
肛門の負担を減らし痔を悪化させないようにすることが大切です。
日常生活に負担がかかるほど悪化した場合や、
薬を使っても治らないような時には、手術も一つの方法でしょう。
痔の漢方薬治療
病院で治療を受けていても、漢方薬を併用するとよいと思います。
漢方の痔の軟膏には紫雲膏、中黄膏などがあります。
(漢方処方)
痔核に
乙字湯、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、当帰芍薬散など
痔の腫れ、痛みに
麻杏甘石湯、越婢加朮湯、桂枝茯苓丸、腸よう湯など
痔出血に
黄連解毒湯、六君子湯、四物湯、芎帰膠がい湯、桂枝茯苓丸など
痔のかゆみに
消風散、乙字湯など
脱肛に
補中益気湯、四逆散、桂枝加芍薬湯など
きれ痔に
四逆散、十全大補湯、排膿散及湯など
肛門周囲炎、肛門周囲膿瘍に
荊防敗毒散、桂枝湯、葛根湯、十味敗毒湯など
痔ろうに
煎じ薬の長服をおすすめします。
千金内托散
托裏消毒飲万病回春の処方と外科正宗の処方とがあります。
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